本ハンドブックでは「こうすればよい」という対応例を提示するのではなく、「配慮する場面」を具体的に提示しています。
今回はハンドブック作成に携わったプロジェクトチームのメンバーに話を聞きました。
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Y・N
クリエイティブ職
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R・Y
制作職
- ―――なぜ作成に携わろうと思いましたか
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Y・N(クリエイティブ職)
世の中の動きと各メディア等で様々な意見に触れる機会が多くなり、このセンシティブな要素をどのようにイベント企画制作に取り組むといいのか悩んでいました。
『LGBTQ+当事者にかかわらず、すべての人がイベントを楽しめるにはどうしたらいいのか』考えながら、ハンドブックの作成に関わることで、その答えを見つけたいと思ったことが一番の理由です。R・Y(制作職)
座談会の参加前に、ちょうど所属部署においてセクシュアリティの多様性をテーマにした業務があり、LGBTQ+座談会に参加することにより、何か業務で活かせることができないかと感じたことと、また会社として性的マイノリティに対する対応の取組み不足を感じていたことがきっかけです。
- ―――ハンドブック作成前の座談会で印象に残ったことはありますか
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Y・N(クリエイティブ職)
座談会で、当事者の方が「一人ひとり求めるレベルは違うけれどもそれはLGBTQ+でなくても同じで、一人ひとりにあった対応とは何だろうと「思案を」心掛けることが大切とおっしゃったことです。この言葉が非常に印象的でした。誰かと仲良くなりたい、大切にしたいと思ったら、人は自然と相手を気遣い、心や希望に寄り添い、その人の望むところを知ろうと努力をすると思います。
その心掛けや配慮が重要で、環境などを整えたところで「不足」は生じるし、補えないのだと感じました。R・Y(制作職)
座談会の中で、「ALLY(アライ*)」について意見交換がありました。『どの段階において「ALLY(アライ)」と言っていいのか』という質問に対して、『ALLY(アライ)には資格もなければ基準もない。
座談会に参加して、ここまで考えてくれるならそれはもうあなたはALLY(アライ)と言っていいですよ』という言葉がとても印象的でした。ALLY(アライ)について特別にテストがあるわけではありませんが、まずLGBTQ+について十分に知る・理解すること。
次に自分の考えや想いを表現し、継続して丁寧に発信し続けること。それらのメッセージや行動がALLY(アライ)として周りの人々に伝わり広がっていくといいなと思います。* ALLY(アライ)・・・LGBTQ+当事者に共感し、理解し支援するという考え方、もしくはそうした立場を表明している人のこと
- ―――ハンドブックを作成した中で、特に
悩んだり苦労したりした部分は
ありますか -
Y・N(クリエイティブ職)
ハンドブックのチェックリスト作成において、一つ一つの言葉や表現方法に心を配ること、また実際のイベント前からイベント後までに、何をどのように配慮する必要があるのかについてリストアップすることが非常に大変でした。そのリストアップする工程においては、座談会に参加した様々な職種のメンバーとともに、それぞれの役割の立場から考えを出し合い意見交換を行いました。 R・Y(制作職)
ハンドブックデザインやテキスト案作成にあたり誰もがシンプルに読めるよう、一つ一つの要素をどのように表現するのが良いのか悩みました。誰もが自分らしく生きられるよう優しい世界を目指すためのハンドブックですので、読者に優しい気持ちや明るい未来を感じてもらえるような思いを込めて作成しました。
- ―――座談会やハンドブック作成に携わる
前後で、意識の変化や、業務に
対する想いに変化は
ありましたか -
R・Y(制作職)
ハンドブック作成に携わる前に意識していたことは、男性/女性、男性向き/女性向きなど性別による好みを断定しないことくらいでした。作成に携わった後は、実は私たちが気づかなかった・知らなかっただけで、当事者が身近に存在する**と意識するようになり、発言や行動を配慮するよう心掛けています。
作成に携わった後は、イベント制作業務においての意識変化として、具体的には、アンケート制作やイベントの申込受付等にて、性別記入欄に「男」「女」に加えて「無回答」や「自由回答」の選択肢を追加することや、アンケート内容によっては性別欄を任意性にすることを検討することになったり、また子供向けのノベルティを手配する場合においても、男性向け/女性向けというような限定的な解釈をされないよう、配慮するようになったことです。**日本におけるLGBTQ+の割合:人口の3〜10%程度
- ―――LGBTQ+の理解が促進されるには何が大切だと考えますか
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Y・N(クリエイティブ職)
マジョリティの方々に理解してもらうという視点は、欠かすことができません。正しい知識を共有することでALLY(アライ)が増え、まだ知らない人たちが減ることで社会環境は変わると考えます。このような活動の機会を増やすことでマジョリティ側の理解が深まって拡がっていけば良いなと思います。当事者の方が話していた「続けていればそれが普通になる」という継続が重要であり、できるところから取り入れてみる。この継続により、活動がスタンダードになり、全ての人が自然体で飾らない社会になっていくことだと感じます。
「みんなちがって、みんないい」が合言葉だと思っています。
【最後に】
監修者プロフィール
堀川 歩(ほりかわ あゆむ)
1990年生まれ 大阪出身
心の性は男性、身体的な性は女性として生まれ、高校卒業後に陸上自衛隊に入隊し、任期満了後に世界の現状を確かめるために世界を一周
帰国後はLGBTQ+の方の総合サポート事業を個人で立ち上げ、その後、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社で人事部長を務めその後起業 株式会社アカルクを設立「人と組織を明るく照らす」をビジョンに、多様な人が働きやすい職場環境作りを専門として、年間100本以上の研修や講演、様々な業界のLGBTQ+に関する推進アドバイザーや相談窓口も兼任している